治験コーディネーターってブラックペアンに出てくる人のようなことをしてるの?
こんにちは。もにたーです。
二宮和也さん主演のドラマ、「ブラックペアン」第1,2話、加藤綾子さん演じる治験コーディネーターの描写に抗議の声が上がっています。
私も見ましたが、あのドラマだけ見たら、これから治験に参加しようとしている人に間違った認識を与えてしまいます。
日本臨床薬理学会の抗議文でも述べられていますが、ドラマでの描写は、現実の治験コーディネーター業務とはかけ離れています。
では、実際にどんなところが違うのか。
ドラマの描写と治験コーディネーター業務の実際について解説します。
治験コーディネーターの説明
治験とコーディネーターについての簡単な説明がありますが、ドラマの説明だと、まるでコーディネーターが開発会社側の人のように聞こえます。
間違っているので、正しい説明をしますね。
まず、コーディネーターは2つのタイプに分類されます。
院内コーディネーターと外部コーディネーターです。
院内コーディネーターは医療機関で勤務する人、外部コーディネーターは、その医療機関から依頼を受けた専門会社から派遣されてきた人のことです。
「ここに出入りしているコーディネーターさん」と看護師さんが言っていたので、このドラマに登場するコーディネーターは、外部のコーディネーターになります。
また、コーディネーターは私のような開発会社側の担当者(臨床開発モニター)とやりとりしますが、開発会社側の人ではありません。
コーディネーターは、治験実施医療機関での治験の実施をサポートする立場である、医療機関側の人です。
コーディネーターを有する会社は、治験をしている医療機関と業務提携をします。
そして、治験を依頼された医師が適格な患者さんを探し、適切に治験を実施するためにサポートを行います。
フランス料理店で勉強会
コーディネーターは勉強会と言っていましたが、これは完全に接待ですね。
まず、勉強会はお店ではしません、というかしてはいけません。医療機関内の会議室などでします。
しかも、医師へのトレーニングは、責任医師(医療機関側の責任者)か、臨床開発モニターがするもので、コーディネーターはしません。
治験協力者の指導・管理責任は責任医師にありますからね。
また、開発された医薬品や医療機器の紹介もしません。
このような医薬品/医療機器の治験をしているが、先生のところで実施してもらえないか?
そのような開発品の治験実施依頼をするのは、私のような開発会社側の人間(臨床開発モニター) です。
また、コーディネーター業務の遂行において、医師と良好な関係を保つのは重要なことです。
しかし、治験においては高い倫理性が求められるため、例え医師の奢りであっても、過度の接触は好ましくありません。
そもそも、みなし公務員にあたる医師であれば、割り勘の飲食ですら禁止されています。
物語の舞台は私立大学病院のようですので、公務員云々は関係ありませんが・・・
ですので、いくつか高級料理店での接待シーンがありますが、実際には接待はありません。
患者に大金を渡す
治験の説明をするために登場したコーディネーターですが、スナイプ手術を渋っている患者に説明をするかと思いきや、いきなり大金(300万)の小切手を患者さんに渡しました。
300万あげるからスナイプ手術しない?って言ってるも同然ですね。
きちんと手術の説明をし、患者からの同意が得られないと手術できません。
しかも負担軽減費の説明後にこのシーンですから、負担軽減費が高額で最初にもらえるという誤解を招いてしまいます。
治験参加への同意をする前から負担軽減費は支払われません!
しかも300万なんて大金にはまずなりませんし、小切手でもありませんし、最初に渡すようなこともしません。
負担軽減費の支払いは出来高払いで、1回の来院または入退院につき、7000円~10000円程度と決まっています。
また、支払い額や方法については、治験審査委員会という第三者機関で審議され、承認を得なければなりません。
ですので、不適切な額が手渡されることは、不正以外にありえません。
倫理的にも完全アウトです。
佐伯医師に菓子折りを渡す
治験では贈収賄が禁止されています。
治験のトレーニングを兼ねた説明会などの際に、定められた金額内で高価ではないお弁当やお菓子を渡すことはあります。
しかし、ドラマのように菓子折りを積極的に渡すことは賄賂にあたりますので、不適切な対応です。
こんなことをしているコーディネーターはいません。
佐伯外科への治験協力費を2000万にするよう交渉
そもそもコーディネーターは開発会社側の人ではありませんし、費用交渉も業務に含まれていません。
治験の費用については、医療機関毎に、協力費(研究費)を算定する基準があります。
そして、治験の内容によってポイントを算出し、それをもとに研究費が算定されます。
それは医療機関の契約担当者と製薬会社側の担当者の間で協議しますので、コーディネーターは関係ありません。
院内をスーツで動き回る
このコーディネーターは最初から最後までスーツ姿でしたね。
コーディネーターは、白衣を着て業務をしているので、業務中にスーツ姿で院内にいることはまずないです。
少なくとも、私は業務中にスーツを着ているところを見たことはありません。
私のような臨床開発担当者やMRはスーツでうろうろしていますので、間違えているのでしょうか・・・
最後に
制作側は治験についてあまり理解がないのかもしれませんね。
治験コーディネーター、臨床開発担当者、MR、それぞれの職業の特徴が混在しており、ツッコミどころがたくさんあります。
特に物語のキャラクターとして登場するコーディネーターに関する部分が現実とかけ離れていますので、誤解のないようにこの記事を書きました。
でも、私はこのドラマを批判するつもりはありません。話としては面白いと思いますから。
ただ、コーディネーターは、困っている患者さんが治験で救われることを願って仕事をしています。
なので、間違った認識は持たないでほしいと思います。
それでは、次の記事でお会いしましょう。