過去に臨床試験をめぐる訴訟が起きたのを知っていますか?

こんにちは、もにたーです。

日本では、過去に臨床試験についての訴訟事件が起こっています。

20年くらい前なので、知らない人も多いと思いますが。

この記事で紹介する訴訟事例は、インフォームド・コンセントが問題になっています。

ナチスよりはマシですが、人権を無視したありえない事例です。

現在の日本で同じようなことが起きるとは思いませんが、知っておいて損はありませんので、インフォームド・コンセントに纏わる歴史の流れを踏まえて、解説します。

臨床研究と臨床試験について

この事件を理解するためには、臨床研究と臨床試験について知らないと何のことかさっぱりなので、簡単にお話しします。

ヒトを対象とする予防・診断・治療法の改善などを目的とする医学的研究を臨床研究といいます。

そして、臨床研究は介入研究と観察研究に分かれますが、介入研究のことを臨床試験といいます。

介入研究(臨床試験)とは
①通常の診療を超え、研究目的で行われるもの
②通常診療の範疇でも、割付て群間比較するもの
例えば、100人の患者さんをAの治療法とBの治療法に分け、効き目を比較する、などが該当します。

インフォームド・コンセントの歴史



日本では、1980年頃から、インフォームド・コンセント(説明に基づく同意)という考え方が定着し始めました。

それまでは、大学病院など、研究機関も兼ね備えているようなところでは、試験的な意味合いを含む治療が、患者さんに十分な説明がされずに行われてきたそうです。

まだ試験段階ですが、●●で治療をしましょう。
と言われたら、患者さんは私は実験対象なの?と不信感を抱きます。

ですから、あえて治療が臨床試験を目的としていることを伏せて治験が行われてきたということですね。

医師からしたらどちらも治療かもしれませんが、患者さんからしたら、通常の治療と、試験を目的とした治療は全く違います。

知らないうちに臨床試験に参加させられるのは、自由意志ではなく、かつてナチスで行われた人権を無視した人体実験と変わりません。

試験を目的としているのであれば、きちんと説明して同意を得るべきだ。

ということで、1996年の薬事法改訂により、新薬承認のための臨床試験の基準を省令で定めることが明記されました。

20数年前のことです。

この薬事法改訂を受け、厚生労働省は、医薬品の臨床試験の実施に関する省令(GCP省令)を交付し、インフォームド・コンセントを義務付けました。

ここから、インフォームド・コンセントと文書による同意が一般化していったのです。

しかし、これはあくまで新薬の治験と製造販売後の臨床試験についてのみです。

それ以外の臨床試験については、法的な規制がなく、それがこの訴訟事件の一因になっていると考えられています。

金沢大学病院の抗がん剤臨床試験



1999年、患者遺族が抗がん剤臨床試験のインフォームド・コンセントをめぐる訴訟を起こしました。

事件の経過は以下の通りです。

1997年12月
ある女性患者さんが、金沢大病院に入院し、卵巣摘出手術を受けました。

1998年1月
担当医より、手術後の追加治療として抗がん剤による化学療法であるCP療法(シクロフォスファミドとシスプラチンの併用療法)を行うことを説明し、患者さんは同意しました。

この抗がん剤の副作用が非常に強かったため、投薬は1回で終了し、承認済みの薬に切り替えられました。

副作用の強さに不信感を覚えた患者側が同病院の医師に相談したところ、知らないうちに臨床試験に参加させられていたことが発覚しました。

その後、患者さんは不信感から別の病院に移ったものの、既に末期癌であったため、死亡。

故人の遺志を継ぎ、家族と相談を受けた医師により訴訟が起こされました。

この患者さんが知らないうちに参加させられていたのが、CP療法とCAP療法(CP療法にアドリアマイシンを追加)の比較臨床試験だったのです。

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北陸婦人科腫瘍治療研究会による臨床試験

当時、この研究会では、CP療法・CAP療法の比較臨床試験が行われていました。

しかし、既に両者に有意な差がないことは世界的に知られており、科学的にこの臨床試験は無意味でした。

しかも、この試験ではなぜか標準的な使用量よりも高用量で投与することが決められていたのです。

なぜ無意味な試験を行うのか?なぜ高用量なのか?

別視点で見ると、この試験には目的があったのではないか?ということが疑われました。

実は、この研究会では、もう1つ別の臨床試験が行われていたのです。

ノイトロジンという承認済みの薬の製造販売後臨床試験です。

※製造販売後臨床試験
製造販売承認後、効き目や安全性の調査のため、一定期間行うことが義務付けられている臨床試験

この薬は、高用量のCP療法・CAP療法によって白血球が減少した患者さんに対して、白血球を回復させる目的で開発されたものです。

つまり、このノイトロジンの適応対象となる患者さんを集めるため、CP療法・CAP療法の比較臨床試験が行われたのではないか、ということです。

お互いの主張と訴訟の結果

病院側は、承認済みの抗がん剤で治療をするという説明をした、使用する用量は承認の範囲内で医師の裁量であり、結果的に臨床試験に登録していないから、これは通常診療の範疇だという主張。

患者側は、臨床試験であることを告げず、参加させられかけたのだから、人格権の侵害だという主張。

結果、臨床試験への登録はされなかったとしても、登録をしようとしていた事実があるため、その時点で説明をし同意を得るべきだったとして、原告側が勝訴しました。

現在であれば、患者側が勝訴するのが当然ですが、当時は新薬や製造販売後以外の臨床試験に関する倫理感が曖昧であったことから、当たり前のことが認められた事件でした。

最後に

原告側が勝訴したものの、様々な疑問について、真相は闇の中だそうです。

それにしても、知らないうちに臨床試験に参加させられてるなんて、ありえないですよね。

インフォームド・コンセントが根付いた現在では考えられません。

ですが、過去には現実にあったことです。

臨床試験の参加する時は、人権を考慮して真摯に対応してくれる医療機関かどうか、念のため見定めた方がいいと思いますよ。

もっと知りたいという方は、「『人体実験』と患者の人格権」という書籍を読んでください。

ちなみに、私は図書館で見つけました。


それでは、次の記事でお会いしましょう。

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